脳腫瘍への遺伝子組み換えウイルス療法(東大病院 臨床試験)

ウイルス療法に属しますが、遺伝子を組み換えることでがん細胞を狙い撃ちさせます。


がん細胞を破壊するよう遺伝子を組み換えたウイルスを使って、がんを治療する臨床試験を今月中にも始めると東京大医学部付属病院が10日、発表した。再発した悪性脳腫瘍(しゅよう)の患者を対象に、がん細胞だけを狙い撃ちするウイルスを注入し、安全性と効果を検証、新しい治療法の確立をめざす。


臨床試験を計画しているのは、東大病院の藤堂具紀特任教授(脳神経外科)らのチーム。07年に学内の審査委員会で承認され、09年5月、厚生労働省の承認を受けた。こうしたウイルス療法の臨床試験は国内初。


臨床試験の対象とするのは悪性脳腫瘍の一種の膠芽腫(こうがしゅ)。手術後に放射線や抗がん剤治療を行っても、平均余命は診断から1年ほどで、2年生存率は30%以下とされる。国内では年間約10万人に1人が発症するという。


頭部に小さな穴を開け、開発したウイルスを腫瘍部分に注入する。腫瘍が再発し、治療の手だてがない症例が対象で、2年をめどに21人に行う。脳の炎症やまひなどが起こらないかや、腫瘍の大きさの変化などを調べる。


注入するウイルスは、口の周りなどに水疱(すいほう)をつくるヘルペスウイルスの三つの遺伝子を組み換えた。ウイルスが細胞に感染した際、がん細胞でだけ増殖し、正常な細胞では増えることができないように工夫。がんを攻撃する免疫細胞を強める働きももたせた。


これまで、ウイルスを運搬役にして、がん細胞の増殖を抑える遺伝子を運ぶなどの方法はあったが、今回の治療法はウイルスそのものが増殖して次々にがん細胞を破壊する。


欧米では同様の臨床試験が始まっているが、今回はさらに安全性や効果を高めたウイルスを使う。
(2009年8月11日 asahi.comの記事より抜粋)